今回は、SUVの機能性とワゴンの実用性を融合したクラウンエステートを紹介します。
パワートレーンは、燃費と動力性能を両立した2.5L HEV仕様のZと、EV走行も可能なPHEV仕様のRSの2種類を設定。また、リアのフルフラットデッキによる広大なラゲージスペースや、アウトドアに最適な装備も魅力的です。今回は、デザイン、走行性能、HEV仕様とPHEV仕様の装備違いなど、詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

基本情報
今回紹介するエステートは「洗練と余裕の大人の雰囲気を併せ持ち、リアのフルフラットデッキとともに、機能的なSUVとしてアクティブライフを楽しめるモデル」とトヨタ自動車は位置づけており、仕事にも遊びにも一生懸命なユーザーが満足できるクルマを目指しているそうです。

グレード構成としては、直列4気筒2.5Lエンジンにモータを組み合わせたHEV仕様が搭載されたZと、そのHEVシステムにより大容量のバッテリーを搭載し、電動ドライブ領域を拡大させたPHEV仕様のRSが設定されており、それぞれの車両本体価格はご覧の通りとなっています。

HEV仕様とPHEV仕様の値段の差額が約170万円となっており、その装備違いの内容と、クラウンシリーズの中ではセダンに次ぐ価格帯となっており、同クラスのレクサス車も選択肢に入ってくる価格となっているため、このエステートの個性は何なのかを後ほど深堀していきます。
続いてパワートレーンについてです。
エステートZには、直列4気筒2.5Lエンジンにモータを組み合わせたHEVシステムが搭載されています。燃費と性能の向上が図られた高効率なHEVシステムとなっており、このクラスのSUVでは驚きの20km/Lの燃費を誇ります。それに加えてフロントモータの出力がスポーツやクロスオーバーと比較して約5割増しとなっていることで、大柄なボディとなって増えている重量アップ分を相殺する、余裕の走りが実現されていることと思われます。

エステートRSには、直列4気筒2.5Lエンジンにモータ、大容量バッテリーを組み合わせたPHEV仕様となっています。大容量のバッテリーを追加することで外部からの充電が可能となり、電動ドライブシーンが拡張されています。EV航続可能距離は約89kmとなっていることで、日常生活のほとんどをEV走行でまかなうことができ、電動ドライブ特有の静粛性の高さはエステートのコンフォート性とマッチしていることと思われます。動力性能に関してはHEV仕様と異なり、エステート用に出力アップなどはなされていませんが、システム最高出力は306psと必要十分なスペックとなっていることから、余裕の加速力が担保されており、不満に感じることはないかと思われます。

外観紹介
外観紹介、まずはボディカラーについてです。
エステートにはモノトーンカラーと、ルーフ周辺がブラック、もしくはグレー系のプレシャスメタルで塗装されたバイトーンカラーを合わせて、ご覧の計10パターンのボディカラーが設定されています。注意点として、こちらのマッシブグレーとプレシャスメタルの組み合わせのバイトーンカラーはRS専用色となっています。


続いてフロントフェイス周りについてです。
フロントフェイス周りに関しては、その他のクラウンシリーズと比較すると、グリルがボディ同色のメッシュ構造となっていることが特徴となっており、迫力のあるフロントフェイスというよりも、大らかなボリューム感のあるフェイスとなっています。

また、他のクラウンシリーズと同様のハンマーヘッドフェイスが採用されていますが、エステートの場合はシャープな切れ長のデイライトと、フォグランプに相当する位置に配されたヘッドライトで形成されたライトユニットで構成されています。イメージとしてはセダンとスポーツの中間のような構成となっており、先進感も感じさせてくれる雰囲気となっています。

また、クラウンらしく質感にもこだわりを感じられ、シリーズの中では最もアウトドアテイストの強いモデルかと思いますが、各部のブラックのパーツはピアノブラック仕立てとなっており、高級感も感じるモデルとなっています。

ヘッドライトはこちらとなっており、通常の車ではフォグランプの位置にあたり、単眼でハイビームとロービームを兼ねるBi-beamヘッドライトとなっており、対向車などを検知し、防眩しつつハイビームを照射するアダプティブハイビーム機能を有しています。


サイドのデザインはこのようになっており、エステートのボディサイズは全長4930mm、全幅1880mm、全高1620mm、ホイールベースが2850mmとなっています。この数値をその他のクラウンシリーズと比較するとこのようになっており、全高も考慮するとクラウンシリーズで最もボリューム感のある車両であることがわかります。


その大きさから取り回しなどに苦労するかもしれませんが、その他のクラウンシリーズ同様、こちらの車両にも後輪操舵の装備が与えられており、最小回転半径はなるべく抑えられ、安全装備も充実しているようでしたので、その他のクラウンシリーズと比較して、操作性が極端に悪化することはないかと思います。
そのボリューム感はフロントとリアのオーバーハングが大きく取られていることや、ボディサイドにキャラクターラインが配されていないことで面の大きさが主張されていることで、より強調されており、SUVとワゴンの融合というコンセプトに則り、運転席頭上から一直線に伸びるルーフのラインも室内空間の広さと機能性の高さを物語っています。このようなボリューム感をもった車両であるため、ボディカラーには膨張色のカラーリングが似合うのかなと思います。

ホイールデザインはこのようになっており、タイヤサイズは235/45R 21インチの大径タイヤとなっています。こちらはRS専用デザインのホイールとなっており、Zではサイズが同じこちらのデザインホイールが装着されます。ちなみに両グレードともにタイヤサイズを235から225へと変更するオプションも用意されています。


また、レッドに塗装されたブレーキキャリパーが装着されていますが、こちらはRS専用のものとなっています。ホイールスポークのデザイン上、クラウンスポーツほどキャリパーの主張が大きくないことからも、クラウンスポーツとのコンセプトの違いを感じます。

足回りにこだわりの装備が与えられており、後輪操舵のセッティングや電子制御サスペンションの減衰力向上により、軽快さと重厚感を両立した走りが実現されているそうです。

リアデザインはこのようになっており、クラウンシリーズに共通した一文字のテールランプにクラウンのロゴが配されたものとなっています。デザインの特徴としてはフロント同様、複雑なライン構成となっておらず、シンプルな面構成となっていることでボリューム感をもったものとなっている点が他のクラウンシリーズと異なる点であり、シルバーメッキやピアノブラックのバンパーが装着されていることで、リア部分でも質感の高さを感じさせてくれるものとなっています。


内装紹介
内装紹介、まずはトランクルームからです。
トランクルームはご覧の通りとなっており、エステートの最大の武器となる広大な荷室空間が備えられています。左右のえぐりも十分とられており、金属パーツで加飾されていることで質感も担保されています。床下収納はそこまで大きく取られていませんでしたが、不便に感じることはまずないかと思います。


また、PHEV仕様ということで外部給電ソケットも備え付けられています。こちらは1500Wまでの外部給電が可能となっていることで、災害時の備えとなるだけでなく、アウトドア趣味などにも大きな武器となることと思われます。

そしてこちらがフルフラット状態となっており、後席背部に備え付けられているスペーサーを展開することで非常に広大かつフラットな荷室空間を作り出すことができ、車中泊など様々な趣味に対応可能なものとなっています。これは他のクラウンシリーズにはない唯一の武器となっています。

また、このようにシートを展開することで腰かけることも可能となっていたり、専用のデッキテーブルが標準装備となっているなど、アクティブな使われ方に対してもクラウンらしいこだわりがつまったものとなっています。ただしこれら装備はRSに標準装備、Zにはオプションとなっている点は注意です。この使い勝手の高さは、クラウンシリーズ以外のSUVに目を向けても随一であり、この特性からエステートが購入対象となる方も多くおられるかと思います。


続いて運転席周りになります。
エステートにはご覧のブルーグレーの内装に加えて、ブラックの内装とこちらのブラウン内装が設定されていますが、ブラックとブラウンはZ専用、ブルーグレー内装はRS専用となっており、それぞれのグレードで共通して選択できる内装色の設定はなく、差別化がなされています。クラウンスポーツのレッド内装ほどのインパクトのある差別化ではありませんが、せめてブラック内装は共通で選択できるようにしてほしかった購入希望者は多くおられるのではないかと思います。




ドア内張はこのようになっており、ほぼ全面がソフトパッドで覆われており、そのブルーグレーのソフトパッドも若干ヴィンテージ感のある模様が施されており、味わい深い内装の仕立てとなっています。ウィンドウ台座にはピアノブラックのパーツ、アクセントとしてブロンズの加飾が与えられていたりと、クラウンらしい質感が担保されています。


乗り込みに関しては、そこまでサイドシルが分厚いといったこともなく、SUVのため頭上スペースがしっかり確保されていることに加え、運転席やハンドルが乗り降りしやすいようにスライドするイージーアクセス機能も備え付けられているため、容易に乗り込むことが可能となっています。

ハンドルはクラウン専用のものとなっており、ドアの内張に見られたブロンズの装飾が与えられていることで質感が担保され、先進感を与えています。左側にオーディオ操作系、右側に予防安全系が装備されている点もその他のクラウンシリーズ同様です。また、パドルシフトがRS、Zとも装備されていることで、どちらの仕様でも自分好みの走らせ方ができる点もポイントです。グレードごとの違いとして、RSではご覧のディンプル加工、グレーステッチが施されたステアリングが装備されることでよりスポーティな内装となるような差別化が行われています。運転の際に最も手で触れる部分となりますので、こちらに専用品が与えられているのは所有満足度に大きく影響がありそうです。



メーターに関しても他のクラウンシリーズ同様、先代から大きな進化を遂げており、全面液晶メーターとなっていて、ご覧の通り数ある選択肢が用意されていることに加えて地図画面を表示できるなど、情報表示量がかなり改善されています。また、運転モード切替の際にはご覧の演出がなされているなど、気分を盛り上げてくれる演出がなされています。



このメータ内の情報表示量の拡大に加えて、ヘッドアップディスプレイによる情報表示を併用することで視線をそらさずに運転に必要な情報を読み取ることが出来そうです。こちらの装備に関しても、どちらのグレードでも標準装備となっている点がありがたいところです。

予防安全装備に関しても、クラウンにふさわしく最新の装備が与えられており、先行車との車間を一定に保つレーダークルーズコントロールやハンドル支援といった最新の予防安全系の装備が搭載されていることに加え、リモート操作で駐車を実施することができるアドバンスドパークや、車両周囲の状況をカメラにて確認できるパノラミックビューモニターも標準装備となっているため、幅広の車両ではありますが、運転は比較的しやすい車両であるといえます。


運転席からの視界はこのようになっています。ナビが視界の稜線とかぶらないように工夫されていることで前方の視界は開けています。左側のAピラーとドアミラーの死角が少し気になりましたが、左斜め後ろの死角も少なく、デジタルインナーミラーも標準装備となっているところがうれしいところです。




ナビ画面はこのようになっており、12.3インチのナビ画面が標準装備となっていて、非常に操作感度もよいものとなっています。ナビの下にはハンドルなどと同様のブロンズ加飾が一直線に入っており、余計な装飾がないことで運転に集中できる内装の雰囲気となっています。

助手席まわりがブルーグレーの内装で囲まれる形状をしており、運転席と対称でなく、全席で特等席を目指したというその他のクラウンシリーズと同様の内装コンセプトとなっています。ナビの下部にはエアコン操作系のスイッチやシートヒーターなどのボタンがシンプルかつ物理スイッチとしてまとめられているので、非常に操作性は良さそうでした。


センタートンネルには少し珍しい縦置き型の置くだけ充電器が標準装備となっています。典型的な横置き充電とは違い、走行時に滑り落ちる心配がないため、いい装備ではないかと思います。ただ、横置きと異なり差し込めるスマホのサイズに制約があることだけが注意ですね。


その後ろにはこれまでと同様の加飾が施された小ぶりの電子シフトノブがあり、非常にスマートな印象です。こちらの仕立てがRSグレードではご覧のディンプル加工仕立てとなっており、Zグレードでは本革仕立てとなっていて、ステアリングの仕立てと同様の差別化ポイントとなっています。


その後ろにはドライブモードセレクトスイッチなどが配置されており、その横にはドリンクホルダーが縦に2つ、USBポートが二つ備え付けられています。エステートの特徴として、後席の乗り心地に配慮した「リヤコンフォートモード」が設定されており、専用の後輪操舵制御と電子サスペンション制御により、後席はもちろん全席で揺れの少ないストレスフリーな乗り心地を実現したモードが設定されています。
このセンタートンネルに関してもウィンドウパネルと同様の素材が使われていますが、ピアノブラックのパーツが用いられていることで非常に高級感を感じさせるものとなっています。取り扱いのみ注意ですね。アームレスト内の収納も十分あり、USBポートなどが備え付けられていました。


シート形状はこのようになっており、その他のクラウンシリーズと同様の形状となっています。ご覧のように腰回りのサポート性に加えて、肩口までしっかりと体を支えてくれる形状となっており、非常に快適性の高いものとなっています。シート形状に関してはRSとZグレードで形状に違いはありません。快適装備としてはシートヒーター、ベンチレーションともに標準装備となっています。

続いて後席周りになります。
ドア内張はこのようになっており、ご覧のように後席にもソフトパッドがふんだんに使われた、前席同等の質感が担保されたものとなっており、ウィンドウ台座周辺の加飾にもピアノブラック、ブロンズのものが与えられています。乗り込みに関してはドアの開口幅も十分とられており、水平基調のルーフラインとなっていることから窮屈感なく、乗り込むことが可能となっています。

後席はこのようになっており、足元スペースとしては非常に広々しており、他のクラウンシリーズと比較するとホイールベースが同じクロスオーバー相当となっており、手の平一枚分のスペースが担保されています。ただ、クロスオーバー以上の室内高が頭上スペースのゆとりを生んでおり、ご覧のオプションの広大なパノラマルーフが設定されていることで、後席室内も明るく、快適性の向上に大きく寄与しています。



センタートンネルの張り出しは少し大きめであるため、後席3人乗りには足元スペースの譲りあいが必要そうなところが少し残念です。アームレストにはペットボトルホルダーが備え付けられており、こちらもピアノブラック加飾が施されているなど、こだわりを感じるものとなっています。


シート形状はこのようになっており、前席ほどではありませんが、サイドの張り出しのあるものとなっていて、長距離運転でも疲れにくいよう配慮されたシート形状となっています。快適装備としてRSにはシートヒーターが与えられていますが、Zには装備不可となっている点は注意です。


これまで述べてきた通り、エステートの最大の武器はその使い勝手の良さかと思いますが、後席の快適性の高さもシリーズトップクラスであり、それに加えてHEV、PHEVのパワートレーンに裏打ちされたクラウンらしい走りも実現されていることを考慮すると、エステートの総合力はクラウンシリーズNo.1であると思われ、もちろんアクティブな趣味などをお持ちの方がメインターゲットになるかと思いますが、クラウンシリーズの中で迷ったらエステートといっても過言でない存在であると思われます。

見積シミュレーション
最後に見積シミュレーションを実施してみました。
グレードにはHEV仕様であるZを選択、ボディカラーは自分好みのマッシブグレー×ブラックのバイトーンを選択し、内装色はブラックとしました。オプションとしてはほとんどが標準装備となっており、後席快適性をアップするパノラマルーフやナンバーフレーム、フロアマットなどを選択、Zグレードなのでエステートの武器であるラゲージデスクなどがオプションであったため、そちらも選択しましたが、チェアとデスクで約5万円は少し高いかなと感じてしまいました。



これらオプション合わせて合計金額が約680万円となりました。同価格帯にクラウンスポーツやNX、ハリアーなどがありますが、後席の快適性まで考慮した走りの味付けや、フルフラットとなることで圧倒的な利便性をもつトランク空間など他にはない武器をもったエステートでありますので、ライバル車種とはしっかりすみわけがなされているかと思います。購入検討の参考となれば幸いです。
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