本記事の内容について
今回の記事では、先日、トヨタ自動車より発表された改良版GRヤリスの改良ポイント、および新規に設定されたメーカーオプションであるエアロパフォーマンスパッケージの紹介を行います。モータースポーツから得られた知見をもとに開発された、こだわりがつまったものとなっており、要注目です。

基本情報
まずは、グレード構成からになります。
GRヤリスには、大きく分けて3つのグレードが設定されており、ベースグレードというには十分ハイスペックなRZグレード、そこからさらにパフォーマンスを向上させる装備を追加したRZハイパフォーマンス、モータースポーツへの参戦を前提とし、装備を簡素化したRCグレードが設定されています。

続いて、パワートレーンについてです。
パワートレーンには、WRC競技での知見を活かし開発された1.6L直列3気筒ターボエンジンが搭載されています。こちらは、全日本ラリー選手権での厳しいモータースポーツの環境下で限界が見極められ、その環境下でも破損しない対策を加えられた結果、出力・トルクが向上した改良型となっており、一般道を使用するラリーに最適化された結果として、あらゆる走行シーンにリニアに対応する高レスポンスエンジンとなっています。私自身、改良前のGRヤリスに試乗したことがありますが、そのレスポンスの良さに感動した覚えがあります。

このエンジンの特性を最大限発揮するのが、あわせて開発された4WDシステムであるGR-fourであり、あらゆる路面状況においても、四輪へのトルク制御を適切に行うことでトラクションを失うことなく、エンジンのパワーを路面に伝えるものとなっています。トルク配分を切り替えるモードが設定されており、前輪後輪のトルク配分が60:40の安定感あるノーマル、前輪後輪のトルク配分が53:47と後輪寄りになり、トラクション性能を最大限発揮できるグラベルモード、前輪後輪の駆動配分を状況により可変するトラックモードが設定されており、状況に応じた走らせ方ができる点が特徴です。また、このトラクション性能をより向上させるトルセンLSDが、RZハイパフォーマンスに標準装備となっています。

最後に、8速ATの仕様であり、特徴としては、世界トップレベルを目指して開発された変速スピードとなっており、シフト操作に気を取られずに運転操作に集中できることで、スポーツドライビングの楽しさを広げるものとなっているそうです。

こちらのDATが、今回の改良で大きく手が加えられており、パドルシフト操作時のダウンシフト可能な回転域の拡大や、マニュアルかつスポーツモード時のレッドゾーン付近でのダイレクト感の向上、登坂勾配でのシフトアップタイミング最適化などが行われています。

また、最大効率での発進が可能となるローンチスタート制御機能が装備されている点も、このAT仕様の特徴となっています。その他にも、グレードごとにチューニングされたサスペンション設定など、走りに関するあらゆる装備に妥協ないこだわりが詰まった、非常に魅力的なパワートレーンとなっています。
外観紹介
外観紹介、まずはボディカラーについてです。
GRヤリスには、全5色のカラーバリエーションが設定されていますが、RCグレードではホワイト系でパール層のないスーパーホワイトのみ選択可能となっています。

エアロパフォーマンスパッケージの外観紹介、まずはフロントフェイスからになります。
ちなみに注意点として、エアロパフォーマンスパッケージはRZ“High performance”、RCのみの設定となっており、RZには装備不可な点が要注意ポイントです。

フロントフェイス周りの追加エアロパーツとしては2つ挙げられ、一つ目はこちらのフロントリップスポイラーとなっており、こちらが装着されることでフロントリフトが抑制され、接地感および空力のバランスが高められ、車両トータルのリフトバランスが向上するそうです。

2つ目が、ダクト付きのボンネットフードとなっています。こちらはGRMNヤリスに採用されていたカーボンボンネットと同一形状のものが採用されており、エンジンルーム内の放熱を行うことで、冷却効果を高める効果が得られます。

続いて、サイドのデザインです。
GRヤリスのボディサイズは、全長3995mm、全幅1805mm、全高1455mm、ホイールベースが2560mmとなっています。ボディサイズは改良前から変更されていません。見た目の迫力にしては意外ですが、全幅は1800mmと少しとなっており、取り回しとしては非常に扱いやすい車両となっているかと思います。
ボディサイドまわりの追加エアロパーツとしては、こちらのフェンダーダクトが挙げられ、こちらが装備されることでホイールハウス内の空気を後方へ放出することができ、操縦安定性の向上へと寄与します。

また、目に見えないところになりますが、ボディ下部にも手が加えられており、燃料タンク下部をフラット形状とすることで、ボディ下部を流れる空気の流れを最適化しています。

ホイールデザインはこのようになっており、こちらはグレードごとに異なり、タイヤサイズはご覧の通りとなっています。

ホイールデザインに加えて、RZハイパフォーマンスの仕様ではブレーキキャリパーがレッドで塗装されており、性能の高さを主張しています。
今回の改良のタイミングでは、足回りにも改良が加えられており、シャシー部品の締結ボルトに締結剛性が高められたボルトが採用されたことで、ステアリング操作に対する応答性と直進安定性が高められているそうです。また、このボルトの採用にあわせて、ショックアブソーバー、電動パワステのチューニングも行われており、RZハイパフォーマンスではサーキット全開走行向け、RZではワインディングからサーキット走行を想定したチューニングが行われているそうです。

リアのデザインはこのようになっており、テールランプの下端が一文字につながる仕様となっていることで、通常ヤリスとの違いが明確になっているとともに、元々のリアフェンダーのふくらみに伴って持っていたリアのどっしり感を、より強調するものとなっています。また、ボディ下部のメッシュ構造も金属製のものに変更されていたりと、細かなアップデートが施されています。

エアロパフォーマンスパッケージでは、こちらのリアバンパーダクトが追加されたことで空気抵抗の低減が図られており、加えて、大型の可変式リアウイングが取り付けられることで、高速域での走行安定性を向上させています。


これら装備がパッケージングされたエアロパフォーマンスパッケージは、今年の秋以降の発売が予定されていますが、価格はまだ未定とのことです。
内装紹介
内装紹介、まずはトランクルームからになります。トランク容量に関しては、改良前後で大きな違いはありません。
ベースがヤリスであることと、4WD方式を採用していることで、横方向へのえぐりもそこまで確保されていないため、トランクスペースとしては狭くなっており、床下のスペースとしても必要最低限となっています。


ただ、この車両はトランクスルーが可能となっており、後席を倒すとご覧のようにフラットなスペースが現れ、この車を二人乗りメインで使用する前提であれば、十分なスペースが確保されており、このスペースがあればタイヤ4本積むことができるかと思いますので、サーキットユースも想定したつくり込みがなされています。

続いて、運転席周りになります。
内装色には、ご覧の4色のバリエーションが設定されていますが、RZハイパフォーマンスのみ、ブラックもしくはブラック×レッドの組み合わせが選択でき、RZ、RCに関してはブラック一択となっています。シート形状も異なり、シート素材に関しても、RZハイパフォーマンスでは合成皮革に対し、RZ、RCに関してはファブリックである点も注意です。

ドア内張はこのようになっており、アルカンターラの内張となっていることで、スポーティ感の演出がなされています。また、前回の年次改良のタイミングで、ウィンドウ台座の角度が変更されており、操作性が向上するなど、細かな改良が実施されています。

ステアリングはこのようになっており、GRのロゴが配されたものとなっており、こちらもグリップ形状が工夫されることで、握りやすい形状となっています。AT仕様の場合は、パドルシフトが設定される点もポイントです。左側に情報操作系、右側に運転支援系のスイッチが集約されています。ちなみに、快適装備としてステアリングヒーターが設定されていますが、RZグレード系のみオプションとなっています。

メーターには、通常ヤリスの改良版でもフル液晶メーターが採用されていましたが、GR専用仕立てとなっており、地図画面表示など、日常使いに適した表示を備えつつ、運転に必要な情報のみを表示するモードも設定されていることで、その時々に合わせた最適な情報表示が可能となります。

運転支援系装備も充実しており、プリクラッシュセーフティの機能や、白線中央を維持するようハンドル支援するレーントレーシングアシストの機能などがRZ系グレードに標準装備されており、今回の改良のタイミングでRCグレードにも同等の装備が標準装備となりました。

ただ、ドアミラーに後方車両の接近を知らせる表示をするブラインドスポットモニターや、バックガイドのモニターはRCに装備不可となっています。
運転視界はこのようになっています。
ナビ画面とメーターが一つのパネルとなっており、ナビ画面がドライバー側にオフセットされていることで、囲まれ感がより高まっているとともに、ナビの位置を下げ、さらにシート着座位置が25mm下げられていることで、前方の視界がかなり改善されています。これは改良前のヤリスでかなり気になっていたところですので、この変化は改良前ユーザーにとっては、うらやましいところかと思います。

ナビ画面はこのようになっており、8インチのナビがRZ系グレードでは標準装備となっており、RCグレードでは装備不可となっています。また、このナビ機能をディスプレイオーディオプラスへとアップデートすることも可能であり、JBLサウンドシステムやアクティブサウンドコントロールもあわせてオプション設定されています。

その下にはエアコン操作パネルやシートヒーター、ドライブモードの切り替えスイッチなどが配置されています。これらのスイッチ配置も、ドライバーが4点式シートベルトなどを装着し、シートに密着した状態でも操作しやすいようにレイアウトが工夫されているそうで、モータースポーツの現場で鍛えられた車両であることがよくわかります。
その後ろには握り心地がよく、ショートストロークなシフトノブがあり、その後ろには手引きのサイドブレーキとドリンクホルダー、小物入れが配置されています。


こちらのサイドブレーキに関しては、競技中の操作性を考慮した縦引き仕様のものがRCにのみオプション設定されていましたが、今回の改良のタイミングで全グレードにオプション設定されました。


シート形状はこのようになっており、ご覧の通り、ヘッドレスト一体型のスポーツシートとなっており、サイドの張り出しが大きな立体的なシートであり、肩から腰にかけてをしっかりと支えてくれ、スポーツ走行中における安心感につながるシートかと思います。

こちらのシートはRZハイパフォーマンスのものとなっており、RZ、RCグレードではこちらのシート形状となるため注意であり、快適装備であるシートヒーターはRZ系グレードのみオプションとなっています。

続いて、改良前のものですが、運転席を私のドライビングポジションに合わせ、後席へと乗り込みます。乗り込む際には頭上注意ですが、クーペほどではないので、比較的乗り込みやすい方かと思います。

乗り込んだ際の視界はこのようになっており、前席のシート形状がスポーツ形状であるため、圧迫感が強く、前方視界はほとんどありません。

足元スペースとしては、身長170㎝の私のドライビングポジションに合わせた状態で足元スペースはこのくらいであり、窮屈と言うほどではありませんでしたが、頭上スペースがほぼなく、手のひら一枚入るかどうか位だったので、身長170cm以上の方は頭が天井に当たってしまうと思われ、快適な状態とは言えないと思われます。


シートの形状としては、前席ほどとはいえませんが、サイドのサポートは張り出しており、体を支えてくれそうな形状となっています。ただ、先ほど申し上げた頭上スペースの狭さや、後席窓が非常に小さいことによる圧迫感などから、長時間のドライブには耐えられないかと思いますので、後席に人が乗っている際には適度な休憩をとるべきかと思います。
見積シミュレーション
最後に、GRヤリスの見積もりシミュレーションを実施してみました。
グレードはRZハイパフォーマンスで、今回改良が行われたAT仕様を選択、プレシャスホワイト、ブラック×レッドの内装の組み合わせにしています。

そこからオプションとして、フロアマットやナンバーフレーム、シートヒーターやJBLサウンドシステムのセットオプションを装着したところ、総額が約580万円となりました。必要最低限のオプションとなっていますが、なかなかな値段となっています。


ただ、ここまでの説明の通り、モータースポーツで勝つためのこだわりが濃縮された車両であり、その趣味の方にはとことん刺さる車となっており、電動化の時代に残された数少ない選択肢かと思いますので、決して高くはないといえるかと思います。毎年のように改良が加えられているので、購入タイミングが難しいかと思いますが、常に最新の装備が与えられたものが購入できると、ポジティブに考えていただければと思います。購入検討の参考となれば幸いです。
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